空耳此方-ソラミミコナタ-

「羽田さん。もし殺すなら、あんたは克己さんじゃなくアイツにするべきだったかもしれない」

「は!? 何故、樋山さんが――」

「そもそも、そこから間違いなんだよ」

「一体どういう―」

「どういうことなのか説明してくれる?」

朋恵が言うと、他の一同も頷いた。
樋山だけは不機嫌そうに舌打ちして椅子の背もたれに体重を乗せる。


「樋山朝隆なんて人間は、存在しない」





間。





「はぁ?」

「何を言ってんの?」

「いや、ここにいるじゃない」

「とうとう頭までいった?」

「……ハンッ…!」

まさに集中砲火。

炯斗はみるみる小さくなって、一人見えない小石を蹴り上げた。

「…皆そんなに否定しなくてもいーじゃん……」

「ああ! 炯斗くん、拗ねないで続きを話して下さい! ね?」

「……うん」

言乃の精一杯のフォローで、涙目を取り去って立ち上がる。


「つかおぉい!! さっき誰か鼻で笑っただろ!!」

「いいから早く説明しなさい!!」


朋恵のヒールが脛にヒットして、再度涙目になった炯斗はようやく話を進めた。


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