空耳此方-ソラミミコナタ-

「最初はまさかって思ったよ。

けど樒なんて植物、一般にそう知ってるもんじゃない。あんたはちょっと植物に関して詳しい。
それを利用して植物を研究してるだなんて嘘をつき、人を嫌う偏屈な人間を演じた」

「…それで?」

「決め手はこれだった」

炯斗はおもむろに、自分の携帯のメールを開き、そこに添付されている画像ファイルを開く。

「ホラよ」

その携帯を高橋に渡すと、郁美と朋恵も横から覗く。

「!! ――これは!」

そこにあったのは、事件当時の高山旭の顔写真。しかし、高橋が声を上げたのはまた違った。

「これ、警察の捜査資料じゃないか!? 何で日奈山くんが!!」

「あー…それは…」

「何で私を見るのよ!?」

「だってさ…」

「あー、朋恵のお父さんかー」

「「ええ!?」」

バッと刑事二人は炯斗を振り返る。

「えっと、まあね」

「……あの狸ジジイめ」

朋恵から負のオーラが出ている。
危険信号だ。

「と、とにかく! 話を戻すぜ。その写真、よく見てくれよ」

三人は改めて写真をじっくりと見た。

髪の毛がボサボサに伸びていたり、痩せて頬がこけていたりするが――間違いない。

高橋は炯斗に向かって頷いた。

「確かに、その人だ」


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