空耳此方-ソラミミコナタ-

「何……?」

痛みに閉じかける目を無理やり開き、炯斗を見上げた時だった。
高山の視界から金髪がいなくなって――

―――ゴッ!!

炯斗の頭が高山の額に直撃した。

「がっ!!」

手も同時に離され支えを失って床に倒れる。
頭をふらふらさせつつ立ち上がった高山は激怒して怒鳴る。

「貴様、このガキぃ!! 殺されてえか!!」

「やってみろよ臆病者!!」

「何?」

どこにでも好きな所をやれ、と炯斗は立つ。
しかし拳は来ない。

「臆病者じゃなかったらなんだ?
捕まって罪を償う気もない癖にか! ずっと逃げて逃げて、怖くなって羽田さんたちを見張るつもりが克己さんと会っちゃって、素性バレると思って殺して!

こと、のんまで…殺ろうとして逃げて!
今ここで俺をボコす度胸もないってか!」

奥歯を食いしばってガリ、と鳴る。
正論で言い返すことが出来ないのか、目だけが血走っている高山。
顔の色が赤くなって来ていることが感情を容易にわからせる。

「簡単に人の命奪っておいて………いつまでも逃げてんじゃねぇよ!!」

「好き勝手言ってんじゃねぇぞこの野郎!!」


不意に高山の腕が素早く振りかぶった。
準備してなかった炯斗はとっさに衝撃に備える。


< 362 / 374 >

この作品をシェア

pagetop