空耳此方-ソラミミコナタ-
倒れた高山のこめかみから5センチと離れていないところに、朋恵のヒールが打ち付けられた。
「ヒィ!!」
無様な声を上げて高山の頬が引きつった。
落ちてくるヒールから、限界まで開いた目を離せない。
「お…お前、こんなことして、いいと思って…」
「もちろんよ」
高い頂点から蔑みを下ろす朋恵。
「私はね…今回はただの通りすがった善意の第三者なのよ。何してもいいでしょ? それにね」
朋恵はしゃがみ込んで耳元で止めの言葉を囁いた。
「島に閉じ籠ってたあなたは知らないでしょうけど…時効制度って3年程前に廃止されてるのよ?」
高山はハッと表情を変わる。赤かった顔は一気に色を失った。
朋恵は立ち上がってにっこりと笑った。
「完全な廃止は死刑に値する犯罪だけだけど、他のだって2倍くらいに引き上げられているの。
つまりあなたに逃げ道はもう何処にもないの…よ!!」
もう一度ヒールを打ち付けると、蛙が潰れたような声を上げて高山は大人しくなった。
「先輩…やっぱり根に持ってたんですね…」
あまりの怖さに青くなりつつも、高橋は今度こそ、高山の腕に手錠をガチャンとかけた。