空耳此方-ソラミミコナタ-

「…終わったな……」

連れていかれる高山を見て、炯斗が呟いた。

「…そうだね」

【お疲れ様でした。炯斗くん】

言乃と恵は疲れたような、やりきったような笑みを浮かべる。
ドサリ、椅子に体を預けると炯斗は大きく伸びをした。

「あー、こんな柄にもないことするんじゃなかったぜ。めちゃくちゃ疲れた」

「そんなことないよ! かっこよかったよ。朋恵さんのが上を行くけど」

【それは否定できませんね】

「うっせー!」

「やってこいって言ったのにいざとなったらこれじゃあねー」

「うっせぇっての!」

ガバと体を起こすと、炯斗が怒ったー! と恵は逃げ惑った。

「今の俺はそんなの追い回すほど子供じゃないですよーだ!」

【返しが十分子供ですって】

苦笑する言乃のそばに、近寄る人影がひとつ。

「君たち…」

止まって振り向けば、すっかり憔悴した、でもどこかすっきりした表情の羽田が立っていた。

「ありがとう。あいつを捕まえてくれて」

「いやいや、そんなんじゃないって」

「いいや。本当なら、それは私がすべきことだったんだ」

「「?」」

「私が本当にするべきことは…発端になった鹿沢さんを憎むことじゃなくて、高山を探し出すことだったんだ…」

「羽田さん…」



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