空耳此方-ソラミミコナタ-
羽田は肩を震わせて、悔しさを噛み締めて、静かに泣いていた。
隠そうとせずに、握った拳も解かずに。
「すまない……すまない…」
【それは、私たちに向けられる言葉ではありません】
言乃の言葉をつむぐ時間、少しの沈黙が起きる。
【言葉とは重いものです。ですから、本来向けられるべき人に送ってください】
「……」
「でも、それだけ反省する気持ちがあれば大丈夫ですよ!」
「そうそう。しっかり罪を償ってきてくれよ。じゃなきゃ花守荘、潰れちまうぜ?」
「はは…それは、大いに困るかな」
羽田は涙を拭って部屋を見回した。
「この花守荘ってね。昔、頼の家の別荘だったんだよ。倒産して売りに出されて、そのまま誰も住まずにいたのを、克己さんが作り直してくれたんだ」
それは、思い出のためか、罪滅ぼしなのか。
「私は嬉しかった。だから建設がこの家から離れるときに、次は私が守っていこうと思っていたんだ」
想い人が造り、養子が守るかの家。
「潰れるのは、本当に困るな…」
「だったら、個人ではなく島全体で経営していきますよ」
村長がこちらに歩いてきて、羽田に笑いかける。
「今まであなたに任せきりだった村の活性化も我々でやっていくことになりますしな」
「村長…!!」
羽田の目にまた涙が浮かびだす。
「本当に、いいんですか?」
「もちろん」
「口止めだとか…口裏合わせてもらったりだとか…いろいろ迷惑かけたのに…っ、こんなことまでっ…」