空耳此方-ソラミミコナタ-
「あ、そだ。ともちー何処にいる?」
え、と高橋は詰まって横目をチラリ。
つられてそちらを見ると、朋恵がいた。
「おーい、ともちー!!」
朋恵は振り返り、郁美とこちらに来る。
「メールで言ってたけど、親父さんが今度一緒に飲みに行こうってさ」
「なっ!?」
瞬間で朋恵は顔を真っ赤にし、郁美は大爆笑をしだした。
「ざっけんじゃないわよ!! 誰が狸ジジイなんかと!!」
「朋恵ー、素直に行ったら?」
「嫌よ!」
何故そんなに父親が苦手なのか。
首を捻る炯斗だが、ヒールが飛びそうなのでやめた。
「つか何であんたに言われるのよ!!」
そして足が振るわれる。
「いってぇ!! 結局蹴られるのかよ!!」
「先輩、今回のことは警部ともども報告ですよ? 休暇中の捜査はご法度だし、一般人に資料を渡すだなんて」
「もう何でも好きにしなさいよ!」
「そういうの自暴自棄っていうんだよ朋恵?」
「うっさい!!」
朋恵の叫びに、その場にいた者たちに笑いがこぼれた。
そこはもう、平和な空間だった。