空耳此方-ソラミミコナタ-
帰還
翌日
炯斗たち三人と透はまたこの洞窟を訪れた。
玲子の墓参りと、アズサに別れを告げるために。
札が張ってある為に視えるアズサの存在に透は腰を抜かしたが、何事かをぶつぶつ呟いてどうにか保っているようだ。
『皆……ありがとう。これで私も、昇れるよ』
「本当に良かったです。アズサさん」
結果は自分たちの為に弟が捕まるという残酷なものになってしまったが、彼女は晴れやかだった。
『きっと…上では玲子おばさんも克己さんも仲良くしてるよ』
「だといいがな。私が行くまで当分首を長くしとれと伝えてくれ」
『……はい』
笑って言うアズサの姿は、もう消えかかっていた。
それでも、笑っている。
『…本当に…ありがとう……さよ……なら』
「じゃあな」
「またいつか」
「皆に宜しくいってね」
口々に告げる三人に、少しだけ惜しむような顔を見せて、それでもやっぱり、笑って逝った。