空耳此方-ソラミミコナタ-


「ねぇ…」

完全にアズサが消え去ったあとの帰り道、恵が口を開いた。

「結局、おじいちゃんがここに来るきっかけになった『大変なこと』って何だったの?」

「そういえば!」

【私たち、それを追いかけて来たんでしたね】

ああ…、と透は頬をかいた。

「それはだな……この島は地盤沈下が起きているんだ。断層の向こう側が少しずつ沈んで行ってるらしい」

「そらまた…危ないな…」

「ああ。だから油断してるとあの洞窟が沈んじまうってキミに急かされてなぁ…」

「そうだったの。良かった。事件とは関係なかったんだね」

「まあな」

しかし、それだけに込み上げるものがある。
恵は一気にそれを噴火させた。

「何それ! だったらさっさといえば良かったじゃない! なんか秘密みたいに仄めかしちゃってさ!」

「…いや……すまん…」

「それで済んだら警察いらないの!」

「ハハ、どっちが大人だか」

「そうですね」

「「笑うな!」」

さすが家族。
息ピッタリだ。


あの後に車を調べたところ、ハンドルから高山の指紋と克己の毛髪が見つかった。
それが決定打になり、羽田の証言と合わせて高山の罪は立証された。


羽田はもちろん全てを自供している。

ただ、昔の事件も重なって高山の方が長くお世話になる見込みが高い。

全て高橋からの情報だ。


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