空耳此方-ソラミミコナタ-

「一件目はね、まだいいの。
親子じゃない車がトンネルから出てきた時に光で目が眩んで誤ってハンドルを切ってしまったと証言したわ。


その運転手は眼科で目薬を受けた帰りで、瞳孔が広がって光が入り易かったのが判明したの」


炯斗は頷き、言乃は携帯にメモをとる。


「でも二件目はさっぱり。
深夜で目も眩まない、飲酒もしてない。
けれども運転手はハンドルを切ってしまった。

運転手には異常は何もなかったというのによ。

そしてそれは今回も同じ―」

朋恵は横目で前が少し傷付いたトラックとその傍らで自動車保険業者と話す運転手を見る。


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