空耳此方-ソラミミコナタ-
そして、頭上の空を見上げ口を動かした。
「…も……わり……し…しょう…?」
「!?」
炯斗は耳を疑った。
今のは一体―?
ことのんは声が出せないはずじゃ――?
でも、聞こえたんだ。
小さく、何かフィルターにかかったようにくぐもった遠い声が。
しっかり言乃の口の動きに合わせて。
「なぁ、ことのん。もしかして―」
「あら、二人とも早かったのね」
炯斗の声を遮って登場したのは、刑事の朋恵だった。