空耳此方-ソラミミコナタ-
【とりあえず、一度お宅に伺ってみてみたいと思います】

「はい、是非。よろしくお願いいたします!」

恵は立ち上がって頭を下げた。
言乃がしっかり了承すると、恵は帰って行った。

彼女の背中が見えなくなってから炯斗がポツリ。

「なあことのん」

「はい?」

「俺もついて行っていい?」

「はい!?」

同じ言葉ながら調子でこうも意味が全く変わる日本語の不思議。

しかし言乃を見る炯斗の目は子供のようにキラキラしている。

……凄く断りにくいです…

しばしの沈黙の後、言乃は小さく息を吐いた。

「わかりました」

「ぃやったー!」

「ただし」

両手をあげて飛び跳ねようとした炯斗はピタリと止まる。

「恵さんが迷惑と言えばすぐに帰ってもらいますよ」

「任して!」

忠告のつもりなのに、喜ぶ目の前の男。
言乃はやはり小さな不安を覚えずにはいられなかった。





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