空耳此方-ソラミミコナタ-
船は小さな船着き場に着いた。
そう、港というよりは船着き場。


そんなところに炯斗は意気揚々と降り立った。

「とうちゃーく!」

少し遅れて、恵と言乃、そして大荷物を持った、船の運転手のおじさんが降りてきた。

おじさんはキョロキョロしている三人をおいて、島へ足を向けながら言った。

「長旅お疲れさん、道なりに右へ行くと集落、左は山と畑だ」

「ありがとうございます」

「おうよ」



三人が頭をあげると、おじさんの向く右手側、つまり集落の方から一台の車がやって来て、おじさんの前にキッと止まった。

おじさんは陽気に手を上げて、車から降りる男性に挨拶した。


「よう、羽田さん。今回もいつも通りこんなもんだ。」

そう言って例の大荷物を男性に渡す。
男性はそれを車に積み込んでいると、おじさんは恵たちを示した。


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