何度忘れようとしても
「もしもし」

「ごめんね、井川ちゃん、寝てた?大丈夫?」

寝起きの様なダミ声で出た私に、和泉さんはまず謝った。

「あ、大丈夫です・・・起きてました」

そう私が言い終わるか言い終わらないかのうちに、和泉さんはまるで、有無を言わせないマシンガンのように言った。

「インフルエンザなんでしょう?ねえ、食べるものあるの?今スーパーに来てるの。何が食べたい?買って届けてあげるよ」

私は泣きそうになった。なんで分かったんだろう。
泣きそうなのをこらえて小さい声になってしまった。

「えぇ・・・なんだか申し訳ないけど、すみません。すごく助かります」
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