何度忘れようとしても
「あ、井川さんじゃないですか?もう大丈夫なんですか?」

佐伯くんは今、帰社したばかりのようで荷物を乗せた台車を押していた。
久しぶりだからか妙にドキドキした。

「うん。死ぬかと思ったけどもう大丈夫だよ。おかげで1週間も休めて夢の冬眠ができたよ」

佐伯くんは笑った。

「でも、まだ無理しないで早く帰った方がいいんじゃないんですか?」

「それが、部長に棚の整理しろって言われちゃって・・・消防設備の検査が入るんだって。知ってた?」

佐伯くんは、「あ・・・」と言った。
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