何度忘れようとしても
「うまく言えないんですけど、今まで決まったレールの上を歩いて来ちゃったような感じなんですよ。それについて深く考えなかったし。だけど最近、そうゆうの嫌になっちゃったんですよ、なんか。新しい所に行って、1からやり直したい気がしてるんですよ。自分の意志で」

私は自分が異動した時の気持ちを思い出していた。
私もそうだったから分かる。
あの時「新しい所に行って、1からやり直したい気がする」という気持ちだった。
そして、新しい所に来て私は良かったと思っている。
でも佐伯くんには、そう言いたくなかった。

新しい所に行ってほしくない。

ここに居て欲しい。

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