何度忘れようとしても
自分の棚の所まで行くと、そこには佐伯くんが居た。
とっさに、普通の表情を作って「お疲れさま」と私は言った。
佐伯くんは私の顔を見るとハッとした顔をして「お疲れさまです」と言った。

本物に会ってしまうと、こうも気持ちが溢れてきてしまうのかと、佐伯くんに背中を向けながら私は早くも泣きそうになっていた。
真梨果ちゃんに頼まれた物を袋につめながら、もう、こうして隣り合わせで働く事すらできないのかと思えば思う程、何も言えなかった。
その時、

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