本と私と魔法使い
「和泉ー?」


岡田ちゃんの声がする。彼は、折角のかきあげた髪をぐしゃぐしゃにして、黒縁眼鏡をかけた。

そうするだけでさっきの印象から、がらっと変わって見える。

獣のような荒々しい部分が影を潜めて優等生っぽい柔らかな温室育ちのお坊っちゃんのように見える。


…暴言吐いた人間には見えないじゃない。

私は半ば呆れ、彼を見ていた。


「…アイリス、俺が良いっていうまで出てくるなよ」

そういうと、彼は棚から適当に本を選んで開いた。


「―眠れ」
「おやすみなさぁい」

アイリスはひらひらと手をふる。どこからか薔薇の花が舞い出す。

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