本と私と魔法使い
アイリスが引きずってきたのは、切り傷や擦り傷、青アザでひどい状態の和泉だった。


「…ッ!!和泉っ、どうしたの!!」


私が叫ぶとうるさそうに耳を塞ぎながら、おどけたように、大丈夫だって、と和泉は言う。


「大丈夫そうじゃないけど…っ」


どっどっどっ、と激しく心臓が鳴っている。嫌な汗が背中を伝う。

「羽津、急いで怪我の手当てを、…咲音はこちらへ」
「いず、み…っ、和泉っ…」


そんな怪我で笑わないで、言葉が見つからない。
頭が真っ白になりかけた時、唇に和泉のぬくもりがふれた。

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