本と私と魔法使い
立つ場所を失ったような不安、よく分からない感情が渦巻いた。
血が繋がってなくても家族なんて、綺麗事言い出したのは誰だろう?

心なんて、見えないものを信じるのは、俺には難し過ぎて、
あの笑顔が、本物なのか偽物なのかわからない俺にはー…



「お待たせ、和泉」

ぼーっとしていた俺を心配そうに覗き込む咲。俺はなんでもない、と首を振った。

「可愛いね、咲ちゃん」

いえいえ、と恥ずかしがりながら父さんの言葉に笑った。シンプルなグレーのシャツワンピに黒のレギンスを下にはいていた。


「ふたりでお出かけ楽しんで行ってらっしゃいね?」

「はーい」

父さんに返事をする咲の手を引っ張って俺は家をでた。
行き先は、決まっていた。


ー…
< 151 / 251 >

この作品をシェア

pagetop