本と私と魔法使い
「っ!!大丈夫ですか?!」

慌ててアイリスは窓からしたを覗き込む。いてて、と頭をなでながらその男はにへらと頼りなく笑った。

「あー…。あんま運動神経良くないんだから気をつけなきゃ、こいつは。…大丈夫ー？アルザぁ？」

「痛いけど、まぁ大丈夫かな…はは」

2人の関係を見るに、確かに怪しい者ではなさそうだ。

「あぁ、申し遅れたね、おれはアルザ・エスコフィネ…。ただの平民出身、今は考古学者なんだ。…君はー？」

「アイリス・ヴィルナです…、サリサ様とはどういう関係ですの？」

アイリスが単刀直入に言うと、困ったようにアルザは頭をかいた。


「あら？なんでいるの？…少し早くないかしら？」

サリサは眉をあげながら、窓に近づきアルザを見下げた。

「君に会いたかったからだよ…落っこちたけどね」

「今行くわ、待っててちょうだい…」

アルザを見て優しそうに微笑むサリサ。アイリスは不安になって行こうとしたサリサのドレスの裾を引っ張った。
サリサは、んー？とアイリスを見る。


「あ、の…アーベル様には…っ」

「言ってないわ…まだ気づかれてもいないし…ね？」

気づかれたらお終いだ。
サリサは裾を翻し、部屋を出て行く。


「多季っっ、あなた、何回あの2人の逢瀬を手伝いましたの？」

壁に突っ立っていた多季に詰め寄る。

「ちょ、落ち着いて、」

「これがっ、落ち着いてられますのっ!?あなた何回２人の逢瀬を手伝いました？…注意はなさったのですか？」

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