本と私と魔法使い

夜、蠢く。

ー…

リビングの大きな机にお母さんの手料理を並べて、夕飯を四人で食べていた。

「佐恵子さんの料理は本当に美味しいね。…なぁ?ハル」

宗一さんが和泉に微笑む。

「そうだね。父さんとふたりの時はこんな手料理なんてでなかったしね?」
「褒め過ぎよ。ねぇ?咲」
「あはは」

ふたりに褒められて、照れながらお母さんが笑った。
お母さんっ・和泉の外面に騙されちゃだめっ、と心のなかで叫びつつ、曖昧に私は笑っておく。
隣に座る和泉がニコニコで怖いんですけど?!

私はこの外面にイラっとして、つん、と肘で脇腹を強めに突っついた。すると、

「な、にかなぁ?」

少し睨んだあと、辛うじて笑って言った。
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