ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
高鳴る心臓
…うう、全ッ然眠れなかった…。
重たい頭と身体を引き摺りながら、だけど心音だけはやたらとうるさくて。
やっと学校の昇降口に着いた頃には、背中に嫌な汗をかいていた。
2月とはいえまだまだ春は遠い。
ぴゅうっと吹いた冬の香りがする風が一気に汗を冷やし、体温を奪っていく。
……あーくそ、俺ガチガチじゃねえか…。
妙な情けなさに襲われ、がくっと肩を落としたときだった。
「さーさのっ♪」
ぽんっ
「ぎゃあああああっ!!」
靴箱から出そうと掴んでいた上靴をぼとぼとと落とした。
ってめぇ、平坂ああああ!!!
お前、昨日の今日なんだからそういうことするなよ!
なにより自分の驚き方が恥ずかしいな、くそ!
平坂がけらけら笑いながら俺に上靴を手渡してきた。
それを乱暴に受け取り、照れ隠しを込めて睨み付ける。