ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


突っ込みを軽く笑って流し、平坂は緊張を貼り付けた俺の顔を一瞥した。


「いいなー、楽しそうで♪」

「…あのなぁ…んな良いもんじゃねーよ…」


教室までの廊下を2人で肩を並べて歩きながら、俺は溜息を吐いた。

…世の女の子は毎年、バレンタインデーはこんな気持ちなのかな。

そりゃあ全員が全員本命を渡して告白するわけじゃないだろうけど、でも。

ただ渡すだけだって、こりゃ相当どきどきするぞ。

それなのに告白まで…なんて、すげぇなぁ。

女の子って、強い。

道理で男が頼りない情けないって言われるわけだ。

敵いっこねーよ。


「咲々乃、ひとりごと言ってるー」

「っ、う、るさい!」


赤くなった顔を平坂から隠すように、ぷいとそっぽを向いた。
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