ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
「はい、ハッピーバレンタイン」
「…お、おう、サンキュ…」
オレンジの袋に入った、まぁ中身を見なくてもわかる毎年恒例のココア生地のクッキー。
…去年が大丈夫だったからといって今年も大丈夫とは限らねぇ…!
さっきのに追加する。
もらう側もドッキドキだな、色んな意味で!
だってこれ食ったら俺また腹壊すかもしれないっていう……2回目が一番キツかったな…。
「…………あ、あのね、」
急に頬をほんのりと赤く染め、夏村が俯いた。
…えーっと…もしかして、この何度か経験したことがあるパターンは…。
咄嗟に脳裏を駆け巡ったのは去年の記憶。
いや、夏村に限って…なぁ…。
「……咲々乃、笑わないで、聞いてね」
真剣な眼差しの夏村が上目遣いで俺をじっと見つめる。
不覚にも高鳴った心臓が恨めしい。
…そしてこのあと、俺の予想は見事に命中した。