ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


“おはよう、白波さん。咲々乃なら、”

“…あ、いいの。これ、バレンタインなんだけど、咲々乃くんに渡してもらってもいい?”

“でももうすぐ戻ってくるよ、そういうのは直接渡した方がいいんじゃない?”

“うーん…大丈夫かな。義理チョコだから。ごめんね、お願い”

“ん、りょーかい”

“ありがとう、平坂くん”


たったそれだけの会話だったらしい。

つーか夏村、あいつほんとお願いだから空気読んでくれ…!

もしもらったらどんな顔して受け取れば良いんだとか妄…いや想像して慌ててた俺がバカみたいだろ!

クソ、俺の時間を1分で良いから返せ…!!

…いや、落ち着け、今さらなにを言っても朝には戻れない。

そんなこと俺でもわかる。

今すべきなのは、この状況を喜ぶことだ。

平坂には白波からのチョコがなくて、俺にはある。


この事実だけで正直俺はもう幸せ有頂天と言いたい、が。
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