ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
「夏村さんがその袋を大事そうに持って、恋する女の子って顔をしてたところ。ほっぺが真っ赤でね、可愛かったなぁ。やっぱり咲々乃くんに渡したんだね、そうだと思った!だってとってもお似合いだもん、咲々乃くんと夏村さん」
……なん、だと…?
ぐらり。
目の前が真っ暗になり、一瞬なにも見えなくなった。
そしてはっと我に帰る。
口は半開きのまま、二の句が次げなかった。
お似合い?
俺と……夏村、が?
自分の中でそっと繰り返した言葉には想像以上の殺傷性があった。
またしても俺の邪魔をするのか、夏村め…!
えーと……つまり、知らないうちに白波の中でおかしな関係図が出来上がってる、んだよな、これは。
改めて認識すると頭の芯がすうっと冷えていくような、そんな感覚を覚えた。
…とりあえず、なにより先に、勘違いを解かなければ。
フリーズしていた脳ミソが漸くのろのろと動き始める音がした。