ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
―――平坂のことが好きだって。
「平坂に渡すんだろ?」
「うあああああ!ちょっ、ばか!誰かに聞かれたら…!」
「咲々乃ーどこー?HR終わったよー?」
遠くの方から平坂の声がした。
…どこまでも良い奴だ。
わざわざ俺を捜しに来てくれたらしい。
声がする方をぼうっと眺めていると、突然名案が浮かんだ。
「……ちょうどいいな」
にやりと笑った俺を見て、夏村が目を見開く。
焦ったように俺の襟首を掴み、力任せに揺さぶってきた。
「う、っぐえ、ちょ、やめろ…!」
「わわわ渡すときに一緒にいてって、今朝頼んだでしょっ…!あんた、今なんか変なこと企んでなかった!?」
…チッ……勘が良いな、さすが長年の付き合い。