ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
ばれてしまっては仕方がないと、思いついた案をそのまま口にする。
「俺がうまく言って、平坂とふたりっきりにしてやるよ」
「…ふ、たり…なんて…無理よ…。それに…なんて言えばいいのか、わかんないっ…」
泣きそうな顔で俯いた夏村を見ていたら、今朝の自分の姿と重なった。
………不安、だよな。
夏村は手作りのチョコに自信がなくて…怖くて渡せないから、わざわざあんなたっかいチョコ買いに行ったんだもんな…。
さっきまで脅すように怒鳴っていた自分が阿呆らしい。
ただ事実を確認したいだけだったのに、いつの間にか夏村の所為で俺が失恋したみたいな気持ちになっていた。
全部、俺があと一歩のところで勇気を出せなかった所為なのに。
…悪ぃな夏村、そんなんお門違いだ。
お詫びのつもりで優しく頭を撫でると、それが伝わったのか夏村の身体から少しだけ力が抜けたのがわかった。