ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
「………まさかあんたに慰められるなんてね」
「お前なぁ…」
こんなときでも憎まれ口は忘れない夏村に感心しつつ、苦笑を零した。
…ストレートに言え、逃げるな。
どれも夏村に向けた言葉のつもりだったが、綺麗に弧を描いて俺の胸に突き刺さった。
……あのとき、腕なんか掴めなくても、言えばよかったんだ。
―――好きだって。
なのに言えなかった。
怖くなった。
拒絶されたらどうしようって、受け入れてもらえなかったら、って考えた。
…今、俺が言ったんだろ。
逃げるなって、こいつに、夏村に。
だったら…俺が逃げるわけには、いかないよな。
「……咲々乃?」
「…サンキュ、お前のお陰で俺も頑張れそうだ」
「え?まさかあんたもっ…」
「あー…そういうこと。だからさ…お互い、逃げずに頑張ろうな」
夏村が口を開くより、少し早く。