ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
苺味の青春
「っ、はぁ、くそ、…!」
淡い期待を込めて教室を確認したが白波の姿はなかった。
チョコが入っている鞄を引っ掴み、廊下を全速力で走り出した。
廊下でたむろしている生徒たちにぶつかりながらもどうにか昇降口を目指す。
…白波は今日部活休みだよな、確か。
手芸部は毎週火曜日が休みだと言っていたことを思い出しながら、もつれそうな足を必死で動かし階段を二段飛ばしで駆け下りる。
頼む、まだいてくれ!!
懇願しながら昇降口に辿り着くと、ちょうど友達に手を振って校門に向かって歩いている白波がいた。
…間に合った!!!
体力が底を尽きかけている帰宅部の俺はぜぇぜぇと荒い息を整えて、勢いよく砂を踏みしめた。
靴を履き替える余裕なんてない。
このチャンスを逃したら、俺は、俺は、
「白波っ!!」
気付いたときには、白波の腕を掴んでいた。