ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
そりゃそうか、夏村とお似合いなんて言われたんだもんな。
…思い出したら少し胸がむかむかしてきた。
「………あのな、」
「…なに?」
俺がよほど神妙な表情をしているのか、白波の顔にも緊張感が走った。
白波は鞄を肩から下ろし、心配そうに俺を見つめている。
あーくそ……なにから言えば良いんだ。
ここまで連れてくるのに俺の勇気はすっかり使い果たしてしまって、情けないことに頭の中は空っぽだった。
……自分の言葉が脳内で反響する。
“ストレートに好きって言え”
んな簡単に言いやがって。
夏村もきっと内心そう毒づいたことだろう。
……でも、でも、そうだよな。
それくらいストレートじゃないと伝わるもんも伝わらないよな。
ぐらぐら揺れていた俺の気持ちが、何故か一瞬で、ぴたりと動きを止めた。