ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
俺も同じように鞄を肩から下ろし、開きっぱなしのファスナーのその奥に手を突っ込むと、目当てのものはすぐ指先にぶつかった。
躊躇うな、逃げるな…!
心臓はばくばくとこれでもかとうるさくて、顔から火が出るんじゃってくらい熱くて。
頭から今にも湯気が吹き出しそうなくらいクラクラして、冷や汗は止まらなくて。
足は情けなくがくがく震えて、今すぐ走って逃げ出したいくらいで。
…でも、それでも、
―――そうまでしても伝えたい想いが、あるんだ。
「…白波が、好きだ。これ、受け取って欲しい」
震える両手でチョコを強く握り締め、白波に勢いよく差し出した。
「……………っ、え…?」
困惑したような白波の声が耳に届く。
からからに渇いた咽喉に唾液を流し込み、真正面から白波を見つめた。
不思議と、足の震えは止まっていた。