ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
最近になってまた少し背が伸びたこいつは、本当に昔あたしが泣かせてた咲々乃なのか。
そんなことばかり考えていて、年を取るごとに生まれる距離感が嫌でたまらなくて。
あたしが避けていたのを、こいつは気付いていない。
元々鈍感なのは知ってたけど。
…でも、平坂はそんなあたしに気付いていたんだ。
だから気になって、知れば知るほど好きになって、苦しくて。
「振られたことは置いとけ。それで自分を卑下すんな」
宥めるような優しく厳しい言い方に、意識が現実に引き戻される。
…咲々乃のくせに。
いっちょまえなこと言って、あたしを叱って、慰めて。
……あたしだけ、ばかみたいだ。
置いてかれる感覚が怖いから距離を取っていたのに、あっさり詰め返されて。
意識していたのはあたしだけ、なのに。