ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
“夏村さんって咲々乃くんと付き合ってるの?”
そう、今まで何百回と訊かれてきた。
付き合ってたら?
付き合ってなかったら?
そんなのあんたたちに関係ないじゃない。
こぽりと怒りが膨らんで小さく爆ぜる音が付きまとって、鬱陶しくて、嫌だったのに。
敵意を剥き出しにするあたしを、いつも咲々乃は笑っていた。
気にすんなとか、放っておけとか。
安い言葉だとわかっていても、どこかそれに安心している自分がいた。
咲々乃が気にしないなら、あたしも。
そうやって受け流すことができなくなったのは、ちょうど平坂に出会った頃からだ。
あの頃もあたしは咲々乃にさりげなく距離を置いていた。
なるべく一緒に帰らないようにしたり、自分から話しかけないようにしたり。
…それでも相変わらず噂は立っていたけど。