ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
進級して新しいクラスになって、咲々乃が同じクラスだということに気付いた。
その日のうちに咲々乃があたしに平坂を紹介してくれて、そのとき初めて平坂と話したんだっけ。
可愛い顔してるなぁ、が第一印象。
でも当時は咲々乃のことで頭がいっぱいだったから、あんまりよく覚えてない。
高校に上がってからますます咲々乃とあたしの関係は不確かなものになっていった。
不自然な、ふたりの間にぽっかりと空いたひとり分の間。
それを目にするたび、咲々乃が離れていくことを実感するのが嫌でたまらなくて。
幼馴染みなんて脆い鎖は簡単に切れてしまうから、だから。
そうなる前に、…あたしから。
これを恋と呼ぶのには違和感があった。
違う、そういうのじゃなくて、もっと、……もっと、大切にしたいもの。
ある種、家族に対する感情によく似ていた。
でもきっと咲々乃はあたしのこと、ただの腐れ縁の幼馴染みとしか思ってない。
あたしもついこの間まではそう思ってた。
顔を合わせたら絶対に口喧嘩を始めるし、…まぁそれも嫌いじゃないんだけど。