ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


「っ、あ、あの、咲々乃く、」

「……先輩、用があるなら俺を呼んでください。こいつは関係ないんで」


ずきり。

関係ない、その言葉に胸が抉られて痛んだ。

阿呆らしい。

今まであたしは咲々乃を避けていて、関係がなくなることを望んでいたはずなのに。

…苦しいなんて思うのは、都合が良すぎる。


「ち、ちがうの、この子があたしにブスってひどいこと…!」


見苦しいな。

音もなく静かに呟くと、


「俺も思いますよ、あんたがブスだって。……行くぞ、」


咲々乃は強くあたしの手を引いて、何事もなかったような顔で教室に向かった。

周りの視線なんか気にならないくらい、あたしは咲々乃の広い背中に見とれていた。

いつからこんなに、距離が空いたんだろう。

そんなことばかり考えながら。
< 78 / 97 >

この作品をシェア

pagetop