ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
弾かれるような速さで食い入るように平坂を見つめると、なぜか平坂がつらそうな顔をしていて。
ああ、あたしがこんな顔をさせているのか。
あたしが咲々乃を避けて、変な距離を取って、先輩に喧嘩を売ったりしたから。
―――全部わかったうえで、心配してくれてるんだ。
そう思ったら一気に視界が歪んだ。
ぶわりと、ぐしゃりと。
涙腺が崩壊したように泣きじゃくるあたしの頭を、平坂は優しく撫でてくれて。
何も理解していない咲々乃はひたすら慌てふためいて。
それがおかしくてしょうがなくて、久しぶりに大口を開けて笑った。
結局、咲々乃にバレたら面倒だから咲々乃にはなにも話さなかったけど。
適当にさっきの先輩のことを思い出した、なんて言えば素直な咲々乃は信じきってしまった。
からっぽになるくらい泣いて、なにか凝り固まっていたものがさらさらと溶け出していくのを感じていた。