ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
あたしは少し、固執しすぎていたのかもしれない。
幼馴染みって言葉に、咲々乃って存在に。
そう思ったら少し恥ずかしくなって、これじゃ恋する乙女だなんて自虐を零した。
でもそれを笑うくらいには、あたしの心は軽くなっていたから。
今まで誰も気付いてくれなかった傷口に、平坂は薬を塗ってくれた。
もう痛くないよ、すぐに治るよ。
そんな言葉が聞こえてくるほどの優しい笑顔を、あたしに向けて。
何も知らない咲々乃にちょっとの罪悪感を抱きながら、平坂と顔を見合わせてこっそり笑い合った。
ごめんね、もう大丈夫。
そんな想いと、密かに芽吹いた恋心を込めて。