ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
重たそうに開く唇は赤くて、少し濡れていた。
「…こんなこと言ったら酷い奴だろうけど、告白っていつも返事に困るんだ」
「……そっか、」
「好いてくれてるのは嬉しいよ…でも、おれはいつも冷めた返事をして、」
「………そんなことないよ、」
「そうかな…でも女の子は顔を真っ赤にして、勇気を振り絞ってくれてるのに、」
「…平坂は、悪くない」
「おれはいつも淡々とごめんねって繰り返して。……いやなやつ、だよねぇ」
へらりと笑った平坂の顔が痛みに歪んでいた。
いつもなら誰にも気付かれないように隠している傷口を、今は少し見せてくれてる。
言い様のない優越感。
でもすぐにそれを打ち消したのは、胸を締め付ける痛みだった。
平坂の苦しそうな顔を見ていたらあたしまで息苦しくなって、意味もなく咽喉に手を添えた。
……そんな風に、思ってたんだ。