ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
咲々乃が“お前はモテるだろ”って言うたびに平坂は何でもないように笑っていたのに。
傷付いてなんかいないって顔を、してたのに。
誰も傷つけないように柔らかな笑顔を浮かべて、いつも、いつも、
その笑顔で、あたしのことも救ってくれたのに。
……もう我慢なんて、できないわ。
想いが込み上げるっていうのはきっと、あの瞬間。
鼓動の音で聴覚が持っていかれそうなのに、不思議なまでに心は静まり返っていて。
ただただ、好きって言いたくなる。
平坂が嫌いだって思うそういうところもあたしは好きだ。
だってあたしが平坂を好きになったのは、あのとき、あたしを心配してくれた優しさがそこにあったから。
自分のことより他人を優先する平坂は誰に優先してもらえるんだろ。
……あたしができたら、いいのに。
あたしが、そうしたいのに。