ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


気付いたら立ち上がって、自分の鞄を引っ掴んでいた。

平坂が目を丸くしてあたしを見ているのがわかり、顔に熱が集まる。

…でも、今。

今、言わなきゃいけない気がしたから。

あたしのなけなしの勇気を出す場所はここだって、思ったから。

鞄の中を覗き込んで、日の目を見ないままゴミ箱に消えるはずだった包みを探した。

本当は、渡さないでいようと思った。

だってどうせ振られるし、平坂だって迷惑だろうし。

でも…伝えたい。

このままなかったことにはしたくない。

だから、


「夏村さん…?」


あたしが帰るつもりなのかと思ったのか、平坂も鞄に手を伸ばす素振りを見せた。

違う、…ちがうよ。

鞄は自分の席に置いたまま、静かに平坂に歩み寄る。

両手にしっかりと、あたしの想いを抱えて。
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