ノンシュガー・ノンビター【VD中編】


迷うな、逃げるな、躊躇うな。

しっかりと平坂の澄んだ双眸を見据えて、一気に言い放った。

半ば睨むような目付きになったけど、そんなことは気にしていられない。

あたしが差し出したチョコを平坂が受け取ったのを確認して、こっそりと涙を呑んだ。

きっと、平坂は困ったように笑うから。

ごめんって、苦しそうに言う。

だったらもうあたしは、返事なんか要らない。

伝えられただけで満足なんて言ったら咲々乃に怒鳴られそうだけど。

でも好きな人が辛そうにしているところなんて、あんただって見たくないでしょ?

だから、あたしも。

そう思って少し下げていた視線をそっと持ち上げると、そこには予想外の光景が拡がっていた。


「……えっ…?」

「っ、!!」



あの平坂が―――顔を真っ赤にしていた。
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