ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
あたしの視線に気付いた途端、平坂は空いた左手で口元を隠した。
…赤い顔を見られたくないと言わんばかりに。
眉を下げて苦笑を浮かべる姿を想像していたのに、現実はあまりにも違いすぎた。
さっき言ってたよ…ね…?
いつも淡々と返す自分が嫌だって…。
驚きを隠せないまま平坂をじっと見つめていると、平坂はおもむろにあたしを見つめ返した。
「………おれのどこが、好き?」
やっぱり顔は真っ赤で。
いつもの平坂からは想像もできない表情をしていて。
好きなところなんて恥ずかしくて言えないっていうのが普段のあたしなのに、そのときはすんなりと出てきた。
「ひ…平坂の…他人のことを思いやれる…優しいところが、好き…」
ありきたりな答えだったかもしれない。
でも、これがあたしの本心だから。