ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
迷いなく言い切ったあたしを見て、平坂は大きな瞳をさらに大きくした。
まあるくて、綺麗。
ビー玉なんて比喩じゃ足りないくらい。
夕日の光を含んできらきらと輝く瞳に見惚れていると、突然肩に重たいものが乗っかった。
…平坂の頭、だ。
あたしの肩に額を預けているのか、じんわりと熱が伝わる。
……え、えっ、ええええっ!?
いよいよなけなしの勇気が充電切れしたあたしはじたばたと暴れたい衝動に駆られながらじっと耐えた。
心臓の音が平坂に聞こえていたらどうしよう。
ばっくんばっくんってうるさい、この音が。
平坂はなにも言わない。
沈黙が重たくて、足が震えて、心臓が甘く痺れる。
身体を強張らせてあたしの背中にそっと平坂の腕が回り、そこからまた熱が拡がり始めた。
少しだけ、あたしの身体から力が抜ける。
「平坂は優しすぎるだけだよ……もっと自分のこと、大事にしていいよ…」
がたがたに震えた情けない声だった。