ノンシュガー・ノンビター【VD中編】

一匙の砂糖



昨日のことを咲々乃に粗方話し終わり、再び視線をコンクリートの地面に向けた。

…あたしは上手く笑えていたのかな。

わかんない。

思い出せない。

結局帰り道だって、ずっと沈黙だったし…。

はあ、と溜息を吐いたあたしを見て、咲々乃が心配そうに声を掛けてくる。


「…お前、寝てないだろ」

「……なんでわかるのよ」

「今の溜息の吐き方は睡眠不足のときのだからな」

「うっわ!なにそれ気持ち悪い!」

「なっ!失礼なこと言うな!俺はただ観察力があるだけでっ…」


「えー?咲々乃には観察力なんかないでしょー?」


ぴしり。

間延びしたその声に驚き、下駄箱から取り出した上靴をぼとりと落とした。
< 94 / 97 >

この作品をシェア

pagetop