ノンシュガー・ノンビター【VD中編】
一匙の砂糖
昨日のことを咲々乃に粗方話し終わり、再び視線をコンクリートの地面に向けた。
…あたしは上手く笑えていたのかな。
わかんない。
思い出せない。
結局帰り道だって、ずっと沈黙だったし…。
はあ、と溜息を吐いたあたしを見て、咲々乃が心配そうに声を掛けてくる。
「…お前、寝てないだろ」
「……なんでわかるのよ」
「今の溜息の吐き方は睡眠不足のときのだからな」
「うっわ!なにそれ気持ち悪い!」
「なっ!失礼なこと言うな!俺はただ観察力があるだけでっ…」
「えー?咲々乃には観察力なんかないでしょー?」
ぴしり。
間延びしたその声に驚き、下駄箱から取り出した上靴をぼとりと落とした。