レモン色の恋【ショートストーリー】
レモンスカッシュ
外は雪が降りそうに寒い。
なのにここは温かい。
週に一度のスイミングスクールの日。
誰が来ても似合わない蛍光のブルーの水着を来て、準備体操をする。
いつからだろう。
泳ぐことが好きになったのは……
ここに来ることが楽しみになったのは……
そう
あの日から。
受付に見慣れない顔。
前髪をピンで留めた男の人。
インストラクターにあんな人いたっけな?
チャラチャラしてそうな印象を受けた。
嫌いなタイプ…
なのに、目が離せなかった。
右手に持ったレモンスカッシュの缶。
「はじめまして。今日からバイトで入った翼です。」
なぜかここのインストラクターはみんな下の名前で呼び合う。
胸に付けられた名札をチラリと見た。
かわいい丸字でかかれた『つばさ』
その名前を
私は
忘れたくても忘れられなかった。