レモン色の恋【ショートストーリー】
真っ白なテーブルにオレンジジュースが並べられていた。
子供達が喜びそうなお菓子が袋の中に入れられていた。
配るのは、つばさ君と女のコーチ。
順番が回ってきた時、たまたま誰かが呼んだ。
『おい、つばさ!』
私に渡そうとしてた手を止めて、一瞬声の方向を見るつばさ君。
女のコーチが私にお菓子を渡そうとした。
やだ!!!
私はつばさ君から欲しいの!!
そう思ったときだった。
「あゆちゃんには俺が渡す!はい、どーぞ!」
そう言って、立ち尽くす私の手にお菓子を乗せた。
触れた。
手が
指が
触れた。
そして、『あゆちゃん』って言った?
聞き間違えじゃない。
だって私の耳は、それを繰り返し繰り返し、私の脳へ届ける。
その声を…
『あゆちゃんには俺が渡す・・・』
名前を覚えていてくれた。
もう、泣いちゃうかも知れない。
その袋を開けられないまま、クリスマス会が始まった。