レモン色の恋【ショートストーリー】


真っ白なテーブルにオレンジジュースが並べられていた。


子供達が喜びそうなお菓子が袋の中に入れられていた。


配るのは、つばさ君と女のコーチ。



順番が回ってきた時、たまたま誰かが呼んだ。



『おい、つばさ!』


私に渡そうとしてた手を止めて、一瞬声の方向を見るつばさ君。


女のコーチが私にお菓子を渡そうとした。



やだ!!!


私はつばさ君から欲しいの!!


そう思ったときだった。



「あゆちゃんには俺が渡す!はい、どーぞ!」


そう言って、立ち尽くす私の手にお菓子を乗せた。



触れた。



手が


指が




触れた。




そして、『あゆちゃん』って言った?


聞き間違えじゃない。


だって私の耳は、それを繰り返し繰り返し、私の脳へ届ける。


その声を…



『あゆちゃんには俺が渡す・・・』




名前を覚えていてくれた。



もう、泣いちゃうかも知れない。



その袋を開けられないまま、クリスマス会が始まった。






< 18 / 50 >

この作品をシェア

pagetop