レモン色の恋【ショートストーリー】
帰り際、部屋の出口で私たちを見送るコーチ達の一番最後につばさ君がいた。
人気者のつばさ君が私に気付いてくれる可能性は低い。
私は、髪を整え、背筋を伸ばして歩く。
大きなプレゼントを抱えた隣の席の女の子の後ろを歩く私は、きっと目に入らないだろう。
自分のプレゼントを当ててくれた子につばさ君は話しかけるんだろう。
サンタの帽子を脱いだつばさ君の髪は、少し乱れていてかわいかった。
蛍光灯が眩しくて、目がまだ慣れていない。
つばさ君の笑顔がぼやけてよく見えなかった。
それは蛍光灯のせいではなく、私の涙のせいだった。
自分でも気づいていなかったけれど…
「あゆちゃん!俺のプレゼント当たらなくて泣いてるの?」
ぼやけてよく見えないせいで、私はじっとつばさ君を見つめていた。
プレゼントを持った隣の席の女の子に聞こえないように小声でつばさ君がそう言った。
何も言えず、自分の涙に驚いた私に…
「元気出せよ~!ほら!」
私の手を握ってくれた大きな手。
つばさ君が握手をしてくれた。
お父さんとも少し違う手。
大きいけれど、指が細くてお父さんのように柔らかくはなく、骨ばっていた。
元気のない私を気遣ってくれたつばさ君は、わざとその手をぶんぶんとおおげさに振って、私を笑わせてくれた。
いつもはピンで留めたり、くくっている前髪がおでこに下りていて、なんだかドキドキした。
笑うととてもやんちゃな子供のような顔になる。
唇が少し赤くて、少し生えたひげもちゃんと見えた。
一瞬なのに
きっと私の永遠になる。
この一瞬を私は
きっと一生忘れないから。