レモン色の恋【ショートストーリー】
チーズケーキ
お母さんには隠し事をしたことはない。
友達とけんかをしても、クラスに好きな子ができても一番に話していた。
だけど、つばさ君のことだけは言えなかった。
どうしてかわからないけど、なんだか恥ずかしかった。
子供なのに
この気持ちは「大人」だったし、急に大人になった自分を見せるのがいやだった。
かわいい赤いお盆の上には、私の大好きなチーズケーキとミルクティー。
お母さんは、私の部屋の真ん中のテーブルにお盆を置いた。
2つ並んだティーカップを見ながらお母さんが言った。
「ひとりで飲みたかったら、お母さん出て行くよ」
遠慮がちにそう言ったお母さんの胸に抱きついた。
お母さんの胸に顔をうずめながら、
私はまだまだお母さんに甘えたい年頃なんだと感じてた。
ずっと言いたかった。
この胸の苦しさのわけを聞きたかった。
一番大好きで、一番そばにいるお母さんに聞いてほしかったんだ。